リムナンテスは愉快な気分

徒然なるままに、言語、数学、音楽、プログラミング、時々人生についての記事を書きます

生き延びる言語、絶滅する言語

「言語」と聞いたらどこの言葉を思い浮かべるだろうか。

 

日本語話者的には日本語、英語あたりが身近な言語だろう。

あるいはフランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語など欧州の言語を考える人もいるだろう。

もっと近くで見れば中国語、朝鮮語(韓国語)なんてのもある。

日本国内を見ればアイヌ語琉球語あたりだろうか。

 

世の中には3000~6000程度の言語があるとされている。

これは調査によってまちまちではあるが(方言かどうかなど判断しづらいため)、概ね数千はあるとみていい。

 

しかしながら、こんなにも沢山あるのに、世界中で使われている頻度が高い言語というのはごくごく少数である。

事実上の国際語である英語(個人的にこれは不服)、最近勢力を伸ばしてきた中国語、元植民地で広く使われていたスペイン語ポルトガル語、フランス語、アラブ世界の公用語であるアラビア語などであろうか。

日本人にはあまり感覚がないようだが、アニメ、ゲーム、マンガなどのサブカルチャー目当てに日本語を学ぶ需要もあったりする(後述の話にもつながるが)。また最近の日本は積極的に外国人雇用を増やそうとしているので、東南アジア系の出稼ぎ労働者なんていうのも増えていて、そういう意味で日本語もまあまあ世界のシェアをもっていると言ってもいいかもしれない。

 

言語は数千もあるというのに、メジャーな言語というのは、両手両足(?)で数えられる程度しかない。

それ以外のマイナー言語は、母語話者の減少にともない消滅の危機に瀕しているものが多い。

宗教で使われていたり、過去の文献で多用されていたラテン語などは、母語話者なくしてもなお使われつづけているが。

 

さて、アイヌ語然り、琉球語然り、絶滅の危機に瀕している言語というのはまあ何とかして保護しようという動きがある。アイヌ語なんかは毎年ラジオ講座をやっていたりして結構がんばっているほうだと思う。

 

しかしどうもこういう「言語保護運動」では、「日常会話をするための言語」を保存しようとしていることが多いように感じる。

ヘブライ語の復活の例もあるので、確かにそれも大事ではあるのだが、現代においては、それだけでは言語として弱いままである気がする。

 

突然だが、言語を学ぶ理由を考えたことはあるだろうか。何故言語を学ぶのか。

私は、以下の4つをあげてみる。

①日常会話に使用するため

②娯楽に接触するため

③学問を学ぶため、情報を手に入れるため

④言語を学ぶことそれ自体が趣味

最後の④については特殊なので飛ばすが、1つずつ見てみよう。

①は前述のとおり、その言語を使う地域で生活する上で必要だから学ぶというもの。これは大概の言語が満たしているといえる。

②はその言語を学ぶことで娯楽に没頭できるからというもの。日本のサブカルに触れるために日本語を理解しようとするのがこれにあたる。また、シェークスピアを英語で読みたい!とか、星の王子様をフランス語で読みたい!とか、有名な本の原著を読むためにその言語を学ぶということもあるだろう。これはこれで需要がある。

③が今回の要だが、わりと発展途上国(という言い方をしたら怒られそうだが)では、高等教育に自分のところの言語を使っていなかったりする。大体英語。なぜか。

結局のところ、母語では学問ができないからこういうことになる。国際的に英語が学術公用語と化しているのでその方が経済的というのもあるのだが、母語に学問ができるだけの語彙が整備されていなかったりすると、学問ができない。仕方がなく非母語である英語(フランス語だったりもするそうな)を使うしかない。

もっと広く「情報」という観点でいえば、政治、軍事にもかかわってくるのもあり、情報をどれだけ手に入れられるかは非常に大事である(知らないと「発明」する羽目になる)。1次情報源に使われている言語の価値が高くなるのは言うまでもない。

 

言語として生き延びるには、前述の①~③のうち満たすものが多ければ多いほどよい(④はマニアックすぎるので除外)。

なのだが、厄介なのは、この時代においては科学がかなりの幅をきかせており、科学ができないとどうしょうもない。科学できるやつが強い。結局のところ高等技術が発展するのは、科学というベースがあってこそなのである。また、科学というもの自体が過去の「情報」を参照しながら発展するものであり、自ずと情報の量は膨大の一途をたどっている。

したがって自ずと③の比重は他に比べて大きくなる。なので、言語が生き延びるには、その言語で学問(もっといえば数学)ができるようにする、そしてその言語で多くの(正しい)情報を量産するのが、効率が良いのではなかろうか。