リムナンテスは愉快な気分

徒然なるままに、言語、数学、音楽、プログラミング、時々人生についての記事を書きます

新イスクイル (v.0.12.4) 勉強ノート 1 【Slot 4, 5, 6】

2021-02-18 追記:v.0.18.5(最新版)はこちら

現行のイスクイル(2011年版 Ithkuil)の後継言語である「新イスクイル」を勉強します。
イスクイルの作者ことJQが新文法を製作しているので、勉強の過程を残しておこう、という試みです。
そのため、学習に向く資料になるかは分かりません。あしからず。

※「新イスクイル」は執筆現在作成途中ですので、常に最新の情報を参照してください。
この記事では、

  • morpho-phonology v.0.12.4
  • lexicon roots v.0.3
  • affixes v.0.6

で学習します。

音素

かなりシンプルになった。楽。とりあえずスルーで。
英語より簡単になったのでは?(個人の感想)
基本的に常識的な読み方をすれば大丈夫。特筆すべきは、

  • r [ɾ]
  • rr [r]
  • [ʁ]

くらいでは?気になった時に帰ってきます。

Scoping order

scoping orderってなに。

枠構造(slot structure)を構成するために考える順番?多分。上から、

  1. Root, Stem, Designation
  2. Function, Specification
  3. Version
  4. VxCs affixes (1st Group)
  5. Configuration, Affiliation
  6. Extension
  7. Perspective
  8. Essence
  9. VxCs affixes (2nd Group)
  10. Valence
  11. Phase
  12. Context
  13. Level
  14. Effect
  15. Aspect
  16. Case
  17. Mood
  18. Sanction
  19. Illocution
  20. Bias

Slot structure

単純形(Simple Formative)、短縮形(Short-Form)、複文形(Complex Formative, これは誤訳かもしれない)の3種類ある。
新イスクイル文法でも枠(Slot)は15個だが、各枠の役割が前バージョンとは違うので一から覚えないといけないではver. 0.12で枠(Slot)の数が13個に圧縮された。

当面は単純形だけ考える。単純形はSlot I〜IIIを使わない。
'V_v+C_R+V_R(+C_s V_X...')+C_A(+V_X C_s...)(+V_N C_N)(+V_C / V_K)(+(')C_B or (')C_Y)+[stress]

IV 'V_v Designation+Version+Relation
V C_R Main Root
VI V_R Function+Stem+Specification of main root
VII C_s V_x...' VxCs affixes
VIII C_A Configuration+Extension+Affiliation+Perspective+Essence
IX V_x C_s... VxCs affixes
X V_N C_N Valence+Context+Mood/Case-Scope or Aspect+Mood/Case-Scope or Phase+Context or Level+Context or Effect+Context
XI V_C/V_K Case, or Illocution+Expectation+Validation
XII (')C_B or (')C_Y Bias or Case-Scope or Mood
XIII [stress] penult.: XI=V_C, ultimate: XI=V_K, antepenultimate: XI=V_C+FNC, ultimate: XI=V_K+FNC

多分最低限理解すべきは下のやつだけ。これだけで単語は作れる。
当面は下だけに集中する。

IV 'V_v Designation+Version+Relation
V C_R Main Root
VI V_R Function+Stem+Specification of main root
VIII C_A Configuration+Extension+Affiliation+Perspective+Essence
XI V_C/V_K Case, or Illocution+Expectation+Validation
XIII [stress] penult.: XIII=V_C, ultimate: XIII=V_K

単語が名詞的ならSlot XIIIはV_C (Case)、動詞的ならV_K (Illocution+Expectation+Validation)として解釈される。どちらなのかはstress(Slot XIII)の位置で決定。後ろから二番目の音節にstressなら名詞的、最終音節にstressなら動詞的。多分。
Slot XIなくても単語になるっぽいけどよくわからない。動詞のときは無くてもいいということかしら。いやそんなことはない気がするけど…は条件付きで省略可能だがほとんどの場合は必要。

語根(Root)

Slot Vの位置。子音1〜6個で表す。

例)
-M- 言語的コミュニケーション、会話、話
-Ň- 書、書くこと、文書
-TX- 飲食、栄養摂取
˜̌KL- ケーキ
-ŘPSTL- ウラン

ただし、語根にkg, nč, zrb, tpk, fmstは含まない(禁則音列)。Glottal stopは含まない。ļ, ç, çç, çw, ř, h, w, yは単独で語根にならない。
素数が減った代償で子音クラスタが激しいことに…

ちなみにthは帯気音[tʰ]、他にはph, kh, ch, čhがあり、それぞれ[pʰ, kʰ, t͡sʰ, t͡ʃʰ]。

語基(Stem)+指示(Designation)

各語根ごとに8種(4x2)の派生形が考えられる。語基はSlot VI、指示はSlot IV。

語基(Stem)の形態論

BASIC Specification, STATIVE functionの場合

STEM 1 STEM 2 STEM 3 STEM 0
a ä ia/öa ao

STEM 0は今までになかった新しい概念で、Rootの一般概念的な意味を表すのに使える。
が、だいたいの語根はSTEM 1がその役割を担う場合が多いのでほぼ不要。覚える必要なし。

指示(Designation)の形態論

PROCESSUAL Version, UNFRAMED Relationの場合

INFORMAL FORMAL
a i/u

特に書いてないけど多分旧文法と同じような役割をするんだと思う。
旧文法の時もよくわからなかったが。
FORMALの方がINFORMALよりも永続的、権威的な意味合いになる。らしい。
辞書にはFORMALもINFORMALも両方の意味が列記されているので、定義を参照するのが安全か。

あとglottal stopは基本書かない。

例:-J- 物の授受

Root+Stem+Designationで単語の大体の意味が決定されるので-J-を例に。
jの発音は[d͡ʒ]。

-aja- INF STEM 1 物の所有権を移すこと
授受の発生、場面、行為
授受行為に従事すること
-ajä- INF STEM 2 与える行為、与えること
-ajia- INF STEM 3 受け取る行為、受け取ること
-ija- FML STEM 1 公的機関を通じて物の所有権を移すこと
(郵送、電報、海運などで)
-ijä- FML STEM 2 公的に送ること(郵送、電報、海運などで)
-ijia- FML STEM 3 公的に受け取ること(郵送、電報、海運などで)

機能(Function)+仕様(Specification)

Stemと共にSlot VIの形態による。
2つのFunction(STATIVE, DYNAMIC)と4つのSpecification(BASIC, CONTENCIAL, CONSTITUTIVE, OBJECTIVE)がある。
機能と仕様の詳しい説明をする前に、形式的な形態論から整理する。

機能(Function)+仕様(Specification)の形態論

  • STEM 1
STATIVE DYNAMIC
BASIC a ai
CONTENCIAL e ei
CONSTITUTIVE o oi
OBJECTIVE u ui

派生による母音階梯交替の基本はa→e→o→u。
STATIVE→DYNAMICALでiが付加され、a→ai。
DYNAMICALの母音階梯交替はai→ei→oi→ui。

  • STEM 2
STATIVE DYNAMIC
BASIC ä au
CONTENCIAL ü eu
CONSTITUTIVE ö ou
OBJECTIVE i iu

äは[æ]、üは[y]、öは[œ]。
CONTENCIALがe→ü、OBJECTIVEがu→iとなることに注意
STATIVEがä→ü→ö→i。
DYNAMICALはaueu→ou→iu。STEM 1のSTATIVEにuを付加。ただしu→iu。

  • STEM 3
STATIVE DYNAMIC
BASIC ia/öa ua/aö
CONTENCIAL ie/öe ue/eö
CONSTITUTIVE io/uö uo/iö
OBJECTIVE ië/oë uë/eë

よくわからん。
だんだんパターンから外れてきてない?

  • STEM 0
STATIVE DYNAMIC
BASIC ao ae
CONTENCIAL ea eo
CONSTITUTIVE oa oe
OBJECTIVE ëi ëu

よくわからん。

機能(Function)

旧文法のFunctionから。

  • STATIVE

状態、静的なもの。動的でない、つまり一時的であったり永続的であったりするもの。
旧文法では"="ではないと言っているが、新文法でも同じ。
旧文法では"="の役割をするFunctionが存在したが、新文法では"="の為のコピュラ語根が新たに存在している(-Č-)。と、思う。

  • DYNAMIC

有形か物理的な行為、因果の伴う出来事。動的なもの。

STATIVEかDYNAMICかというのは本質的に存在するわけではなく話者の主観で決定されるものである。
話者がその「状態」を伝えたいのか、あるいは「行為」を伝えたいのか、という情報である。

例)
-aja-
IFL/PRC/UNFRAMED-'transfer of possession'-BSC/STA-
物の所有権を移している状態

-ajai-
IFL/PRC/UNFRAMED-'transfer of possession'-BSC/DYN-
物の所有権を移す行為

仕様(Specification)

旧文法(ithkuil-2011)には無かった仕様。
ちょっとよくわからない。基本的にSTEM 1/INFについてはlexiconに意味が書いてあるので、それを参照するしかないか今の所は。
一連の状態や動作に対して、どこに注目するか?ということだと思う。

  • BASIC

語根の包括的な実体化?
活性化された、時間的に不定、動的、心理的に動詞的な観念を表す語根(DYNAMIC Functionのこと?)に対しては、名詞的単語は「〜の実体」、「〜の発生」、動詞的単語は「〜が発生する」を意味する。
一方で、具現化された、時間的に安定、静的、心理的に名詞的な概念を表す語根(STATIVE Function?)に対しては、名詞的単語は「存在する〜」、動詞的単語では「〜が存在する」を意味する。

  • CONTENCIAL

物理的、非物理的問わず、内容、本質、目的の伴う機能、理想化抽象化精神的な形態。
単なる物理的な形とは違う。

  • CONSTITUTIVE

機能や目的とは対照的に、それを構成するもの。誰によってその行為が形作られているか。

  • OBJECTIVE

行為、状態、出来事に関係する対象、物体、製品。実体を伴うもの。

例)
-aja-
IFL/PRC/UNFRAMED-'transfer of possession'-BSC/STA-
物の所有権を移している状態

-aje-
IFL/PRC/UNFRAMED-'transfer of possession'-CTE/STA-
ある特定の物が授受されている状態(授受される物に注目しており、誰がやってるかは気にしない)

-ajo-
IFL/PRC/UNFRAMED-'transfer of possession'-CSV/STA-
物が誰かと誰かの間で授受されている状態(何が受け渡されているかは気にしない)

-aju-
IFL/PRC/UNFRAMED-'transfer of possession'-OBJ/STA-
授受されている状態の物