整数環 において素数は重要な役割を担っており、環論の世界ではイデアル は素イデアル、極大イデアルという性質を持っているのでした。一般に、
という関係があります。今回は極大イデアルについて。
極大イデアルの定義
となるイデアル が存在しない、 を含む のイデアルが存在しないとき、 は極大イデアルと呼ばれます。
例えば整数環 について、 ですが、 は極大イデアルです。また や は に含まれるので極大イデアルではないです。
【証明】
を体として、 となる のイデアル が存在すると仮定する。
とすると なので 。
また、 なので が体であることから逆元 が存在し、 となる が取れる。つまり、
\begin{align}
(a+M)(a'+M)=aa'+M=1+M
\end{align}なので
\begin{align}
1-aa' \in M \subset I
\end{align} なので であるから
\begin{align}
1\in aa'+I = I
\end{align}イデアルの定義( に対して )から、 が単位元 を含むということは に対して ということなので 。
これは と仮定したことに矛盾し、 となるので は の極大イデアルである。
が の極大イデアルであるとする。
をとると、 なので 。
そこで、 とおくと、
\begin{align}
M\subsetneq I=Ra+M \subset R
\end{align} の極大性から なので結局
\begin{align}
M\subsetneq I=Ra+M = R
\end{align}よって、単位元は の元で
\begin{align}
1\in I=Ra+M
\end{align}から、 が存在して
\begin{align}
1=a'a+b \Rightarrow a'a=1-b
\end{align} であるから
\begin{align}
(a'+M)(a+M)=a'a+M=1-b+M=1+M
\end{align}なので
\begin{align}
(a'+M)=(a+M)^{-1}
\end{align}したがって が で逆元 をもつので は体。
素イデアルと極大イデアルの関係
【証明】
可換環 のイデアルを とすると、
が極大イデアル が体 が整域 が素イデアル。
prop 1より が極大イデアルであることと が体であることは同値でした。
また、 が素イデアルであることと が整域であることも同値でした。
そして、体ならば整域なので、こうなります。
さらに、可換環 が単項イデアル整域(PID)であれば素イデアルと極大イデアルが同値になります。
【証明】
prop 2で証明した
が単項イデアル整域なので、 の素イデアル を考える。
となるイデアル をとると、 なので
\begin{align}
x = yz \quad (z\in R)
\end{align}ここで、 より であるから
\begin{align}
z = xw \quad (w\in R)
\end{align}よって から 。
は整域であり なので より 。
よって、 から 。
以上より は極大イデアルとなる。