加群というやつにもいろいろあり
などがあります。この先は様々な加群の性質を見ていこう、ということで、環上の加群第2回では部分加群、剰余加群、有限生成加群について説明します。
部分加群の定義
部分群の時と同じように部分加群を定義します。
つまり、集合としての部分集合を取ってきたときに、(1) が部分加法群であり、(2) 環の元を掛けてもに入っていればは部分加群であるといえます。
というわけで次の定理が成り立ちます。
これは(実質的に)加群の定義と見なせます。
部分群の定義から考えると厳密にはも入れる必要がありそうですが、(2)を満たすときより加群上の演算としてdef 1.1 (3)とprop 1.2 (2)からとのスカラー積を考えるとが言えるため、これは(2)に含まれます。
(可換環は加法に関して群であるので、乗法単位元の加法逆元がの元)
部分加群の性質
環上の加群について考えます。また、がの部分加群であるとします。ここで、
共通部分:
和:
とすると、(集合として)下のような図で表すことができます。
このとき、、も部分加群です。これは複数個(多分共通部分は無限個、和は有限個)あっても同様に部分加群になります(prop2.4, 2.5)。
2つの部分加群について考えると、
とすればかつなので。
のときは部分加群の元なので。またの元でもあるので。なので。
これを帰納的に適用すればprop 2.4が示せます。
同じように2つの部分加群について考えると、
とするとであり、から。
また、なので。
これを帰納的に適用すればprop 2.5が示せます。
有限生成
加群の生成について。
とりあえず包含関係はこうです。ではなくてが部分加群。
具体的な生成方法はprop 2.7。
群の生成の場合は、部分集合の元とそれらの逆元の有限積の集合が部分群となるのでした。しかし加群の場合は環の積とのスカラー倍に関しても演算が閉じている必要があるため、結局は
のようになります。
これはイデアルの生成と同様です(イデアルは加群なのでそれはそう)。
ベクトル空間の1次結合みたいなやつ。
特に環上でで生成することを明記する場合はと書きます。
def 2.8のとき、をの生成系(あるいは、はで生成される)という。
が有限でのとき、は有限生成であるという。
加群の場合は有限生成だからといって1次独立とは限りません(つまり基底がない場合がある)。
ベクトル空間の場合はのときならとできましたが、これはが体の元のため乗法逆元が取れるのでした。
環の場合は乗法逆元が取れないので、上のような式変形はできません。なので、基底でなくても加群が生成できます。