リムナンテスは愉快な気分

徒然なるままに、言語、数学、音楽、プログラミング、時々人生についての記事を書きます

クラインの4元群【群論】

中国語飽きたので数学。


def 9.1 V=\{e, (1~2)(3~4), (1~3)(2~4), (1~4)(2~3)\}
で表される Vクラインの4元群という。


prop 9.2クラインの4元群は、4次対象群の正規部分群である。即ち
 V \lhd A_4

 A_4の任意の元 \rhoを持ってきて

 \rho V \rho^{-1} \in V

であることを示せばよい。

このことを示すために、任意の互換 (i~j) \forall \rho \in A_4に対して

 \rho (i~j) \rho^{-1}=(\rho(i)~\rho(j))

が成立することを利用する。
あんまりイメージつかない気がするので、なんか適当な偶置換とその逆写像 \rho, \rho^{-1}と互換 (2~4)を考えましょう。

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 (1~2~3~4)を置換してみます。置換の積は右側から作用させます。 \rho^{-1}, (2~4), \rhoの順に置換を実行すると、 \rho (2~4) \rho^{-1} (\rho(2)~\rho(4))=(1~4)に一致します。

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一般の互換 (i~j)に対してはこうなります。

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置換 \rho^{-1}を作用させた後の元(2段目)を i,j,k,lとすると、作用前の元は \rho(i),\rho(j),\rho(k),\rho(l)と表せます。このうち、 \rho(k),\rho(l)は互換 (i~j)の影響を受けないので、

 \begin{align}\rho (i~j) \rho^{-1}(\rho(k))&=\rho(k) \\ \rho (i~j) \rho^{-1}(\rho(l))&=\rho(l)\end{align}

 \rho(i),\rho(j)は2段目→3段目で i,jが入れ替わるため、両者は入れ替わります。
 \begin{align}\rho (i~j) \rho^{-1}(\rho(i))&=\rho(j) \\ \rho (i~j) \rho^{-1}(\rho(j))&=\rho(i) \end{align}

というわけで、結局のところ \rho (i~j) \rho^{-1}は互換 (\rho(i)~\rho(j))と等しくなります。


【証明】
 \forall \rho \in A_4 に対し、
 \rho (i~j) \rho^{-1}=(\rho(i)~\rho(j))
となる。

ここで、 \{a,b,c,d\}=\{1,2,3,4\}とすると、 e以外の Vの元は (a~b)(c~d)の形に書ける。
よって上の事実を適用すると、

 \begin{align} \rho (a~b)(c~d) \rho^{-1} &= \rho(a~b)\rho^{-1}\rho(c~d)\rho^{-1} \\ &=(\rho(a)~\rho(b))(\rho(c)~\rho(d)) \end{align}

かつ \rho全単射なので、
 \{\rho(a),\rho(b),\rho(c),\rho(d)\}=\{a,b,c,d\}=\{1,2,3,4\}

なので、
 \rho (a~b)(c~d)\rho^{-1}=(\rho(a)~\rho(b))(\rho(c)~\rho(d))\in V

となる。また、
 \rho e \rho^{-1} \in V

なので、 \rho V \rho^{-1} \in Vとなるので V \lhd A_4