リムナンテスは愉快な気分

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マーシャル語学習記 vol.7 - 時制1(現在形、過去形)

さてようやく時制。
マーシャル語の時制は過去、現在、近接未来、未来の4つです(多分)。
vol.7 では過去、現在について書こうかなと思います。近接未来、未来はvol.8で。

現在形

形容詞likeな単語の場合は、形容詞または動詞にそのまま主格接辞をつけました。
が、その他の一般動詞では主格接辞と本動詞の間に時制の接中辞が挟まります。現在形では-j-。
あるいは、時制の助動詞が人称変化する、と捉えてもよいかもしれません。

imeļeļe (i-meļeļe):「私は理解している」
ij m̧ōn̄ā (i-j-m̧ōn̄ā): 「私は食べる」

時制の接中辞と動詞の間は分かち書きをします。
現在時制の活用表はこのような感じ。

人称・数 マーシャル語 日本語
1sg ij i+j 私は(今)〜する
2sg kwōj kwō+j あなたは(今)〜する
3sg ej e+j 彼/彼女/それは(今)〜する
1pl.incl jej je+j 私たち(包含)は(今)〜する
1pl.excl kōmij kōm+j 私たち(除外)は(今)〜する
2pl kom̧ij kom̧+j あなたたちは(今)〜する
3pl rej re+j 彼ら/彼女ら/それらは(今)〜する

基本的に主格接辞+'j'で構成されます。1人称複数(除外)と2人称複数については主格接辞+'ij'となります。これは憶測ですが、「本来は'ij'だが母音に接続するときは母音連続を避けて'i'がdropする」か、「子音に接続する時は閉音節を避けるために介入母音'i'が挿入される」かのどちらかで解釈するのが筋だと思います。キリバス語との類型で、特定の子音連続の時に介入母音-i-を挿入するという規則が働いていると思われます。書いてないけど。


例外として、主語が名前に言及するもの(eta「私の名前」など)の場合はejの代わりにin「〜の」を使います。
(元が英語母語話者向けに書いてあるのでわかりづらいのですが、つまるところ用言が固有名詞の時は、ということだと思います。)

eta in Alfred: 「私の名前はAlfredです」

eta ej alfredにはなりません。

過去形

過去形では主格接辞と本動詞の間に接中辞-ar-を挟みます。
現在形とは違って、動詞が形容詞的か否かに関わらず過去を表す時は-ar-を使います。

iaar m̧ōņōņō (ia-ar-m̧ōņōņō):「私は幸せだった」
kwaar m̧ōn̄ā (kwa-ar-m̧ōn̄ā): 「あなたは食べた」

形態素の分かれ目がどこにあるのかいまいちわかりませんが…
過去時制の活用表です。

人称・数 マーシャル語 日本語
1sg iaar i+ar 私は〜した
2sg kwaar kwō+ar あなたは〜した
3sg eaar e+ar 彼/彼女/それは〜した
1pl.incl jaar je+ar 私たち(包含)は〜した
1pl.excl kōmar kōm+ar 私たち(除外)は〜した
2pl kom̧ar kom̧+ar あなたたちは〜した
3pl raar re+ar 彼ら/彼女ら/それらは〜した

語幹の母音がdropするのはなんか気持ち悪いので、主格接辞の末母音が変化したと解釈することにします。
それから3人称単数は'aar'となる時があるようです。

マーシャル語には大きく分けてラリック方言(西部方言)とラタック方言(東部方言)の2つがありますが、ラタック方言では-ar-の代わりに-kar-が使われるようです。

人称・数 マーシャル語 日本語
1sg ikar i+kar 私は〜した
2sg kwōkar kwō+kar あなたは〜した
3sg ekar e+kar 彼/彼女/それは〜した
1pl.incl jekar je+kar 私たち(包含)は〜した
1pl.excl kōmikar kōm+kar 私たち(除外)は〜した
2pl kom̧ikar kom̧+kar あなたたちは〜した
3pl rekar re+kar 彼ら/彼女ら/それらは〜した


こちらも1人称複数除外と2人称複数に-i-が挿入されているので、やはりそう。