この記事は
- 等位接続接辞 -ma
- 接続詞省略
についての記事です。
1. 等位接続接辞
文と文の等位接続を表す単語 u がありました。
アッカド語では、文末の動詞に接辞 -ma をつけることでも等位接続を表すことができます。
u と -ma の用法:
(1) -ma は動詞の法が同じ2文、つまり直接法なら直接法、接続法なら接続法同士をつなげる。u は特に制約はない。
(2) u で繋いだ2つの節は意味的に等価。-ma を使うと後段の節(主節)のほうが意味的に強調される。
(3) -ma で繋ぐと論理接続(~なので、~のとき、~なら、など)のニュアンスがでる。
-ma を使うと、従属節(-ma がついている方)が起こった結果、主節の出来事が起こった、という因果関係を表すことができます。
神々は王を置かなかったので、国は滅んだ。
iškun | 置いた < šakānum |
m̄atum | 国、土地 |
iḫliq | 滅んだ < ḫalāqum |
上の文では、国が滅んだ(mātum iḫliq)原因は神々が王を置かなかったから(ilū šarram ul iškunū)、ということを示唆しています。
一方で、 u を使った場合は添加(そして、加えて、など)の意味が出ます。
彼らは家を守り、そして王から銀を受け取った。
bītum | 家 |
iṣṣur | 守った < naṣārum |
kaspum | 銀 |
imḫur | 受け取った < maḫārum |
(4) アッカド語には「しかし」という逆説の単語がないため、 -ma でも u でも逆説を表す場合がある。
裁判官は山に着いたが、敵の軍隊が見えなかった。
dayyānum | 裁判官 |
šadûm | 山 |
ṣābum | 軍隊 |
nakrum | 敵の |
iṭṭul | 見えた < naṭālum |
u はともかく -ma については順接でも逆説でも「<従属節>した結果<主節>であった」という因果関係を表しており、一貫していると思う。
(5) 稀に -ma u が使われる。
(6) 「または」は ū または ū lū で表す。
2. 接続表現の省略
アッカド語では接続表現がなくても節と節を続けることで接続の意味を表すことが可能です。
王は奴隷を送った。(しかし)奴隷は来なかった。
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参考文献
- J. Huehnergard, A Grammar of Akkadian (3rd ed. 2011), Harvard Semitic Museum Studies 45, ISBN 978-1-57506-922-7.
- D. Snell, Enkonduko en la Akadan (Tria, reviziita eldono), esperantigita de Michael Wolf, Biblical Institute Press, Rome, 1988, ISBN: 88-7653-566-7.