この記事は
- アッカド語の前置詞
- 前置詞+名詞で作る副詞句
- 限定代名詞
についての記事です。
1. アッカド語の前置詞
今回学ぶアッカド語の前置詞は、ša(〜の)、ina(〜の中に)、ištu(〜から外へ)、itti(〜と共に)、の4つです。
短母音で終わる2音節単語が多いのが、アッカド語の前置詞の特徴です。
またアッカド語では、前置詞の後ろには属格の名詞がきます(属格とか格変化を忘れた人は前回の記事を見て復習してください)。
■ ša(〜の)
A ša B
で「BのA」という意味になります。日本語の語順とは逆になっています。英語などと同じ語順です。前置詞の後の名詞(上の文のB)は属格形にします。
šarrum ša Bābilim
バビロンの王
inān ša wardim
奴隷の目
A ša B | BのA(Bはgen. ) |
šarrum | 王 |
Bābilim*1 | バビロン |
inum | 目 |
wardum | 男奴隷 |
Babilim、wardimが単数属格語尾(-im)になっていることに注意してください。
それから、人間の目は通常2つくっついているので、奴隷の「目」は単数ではなく双数(inum (sg. nom.)ではなく、inān (du. nom.))です。
双数、複数の場合、前置詞の後ろに来る名詞は斜格(斜格は属格と対格の両方の役割を担います)です。
emūqum ša ilī
神々の力
emūqum | 力 |
ilum | 神 |
■ ina(〜の中に)
〜の中に、〜の中で、といった意味になります。
ina bitim
家の中で
ina libbim ša ālim
街の中心で
ina | 〜の中に、〜の中で |
bitum | 家 |
libbum | 中心 |
ālum | 街 |
他にも「〜を使って」とか「〜という手段で」と言いたい時にも使われます。
■ ištu(〜から外へ)
〜の外で、〜から外へ、といった意味になります。
ištu bitim
家の外で
ištu | 〜の外で、〜から外へ |
■ itti(〜と共に)
〜と共に、〜を使って、といった意味になります。
itti mārtim
娘と共に
itti īnīn u uznīn
目と耳を使って
itti | 〜と共に、〜を使って |
mārtum | 娘 |
A u B | AとB(接続詞) |
īnum | 目(しばしば双数が使われる) |
uznum | 耳(しばしば双数が使われる) |
3. まとめ
- ほとんどの前置詞は短母音で終わる2音節語
- 前置詞の後ろの名詞は属格(双数、複数なら斜格)
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参考文献
- Huehnergard, J. A Grammar of Akkadian (3rd ed. 2011). Harvard Semitic Museum Studies 45. ISBN 978-1-57506-922-7
*1:何で主格なのに語尾が-imなのかと思うかもしれませんが、実は Bābilim という単語は bāb ili(神の門)から来ているので、神「の」という属格が残っている(という説がある)